• しみる・痛い症状とは?歯の知覚過敏のメカニズム

    投稿者:clover

     

    以前toothwear(非細菌性硬組織欠損、摩耗、咬耗、アブフラクション、酸蝕)についてお伝えしましたが、実際に皆さんが自覚するのは「しみる」や「痛い」といった症状になってからが多いと思います。
    これは象牙質知覚過敏という状態です。
    今回はなぜむし歯じゃないのに痛みがでるのか、治療の選択肢などをお伝えします。
    前回のコラムはこちらから

    Tooth Wear口腔内でおこる硬組織欠損

     

    知覚過敏とは

    露出した象牙質に加わった摩擦、温度変化、浸透圧変化、乾燥などの外来刺激によって一過性の鋭い痛みが誘発されることです。
    また刺激を取り除くと痛みがなくなります。
    生活の中で感じやすいのは冷たいものを飲んだ時、歯ブラシで擦れた時、甘いものを食べた時などが当てはまります。

    なぜしみるのか

    実は知覚過敏のメカニズムはまだ解明されきれていません。その中でも有力な説が「動水力学説」です。
    象牙質表面から歯髄に向けてある目に見えない細い管のことを象牙細管と言います。
    細管の中は組織液で満たされており、歯髄側にある象牙芽細胞の周りを痛みを知覚する神経が巻き付いています。
    普段はこの細管の入り口は閉じていて外からの刺激(冷たい飲み物、歯ブラシの毛先など)は受け付けません。
    しかし前回お話ししたようなtoothwear(咬耗、摩耗、アブフラクション、酸蝕)や歯肉退縮などにより象牙質が露出し、細管の入り口が開かれることがあります。
    象牙細管の開口部が露出すると刺激がきた時に組織液が動き、流れが痛みを感じる神経にまで伝達されます。
    結果刺激によって痛みを感じる知覚過敏になります。

    知覚過敏への対応


    刺激を伝える流れとしては
    象牙細管の入り口が開いている

    刺激が組織液を揺らして神経まで伝える

    神経が興奮して痛みを脳に伝える
    それぞれの段階でアプローチすることで脳に痛みを伝えないようにすることができます。

    1.知覚鈍麻
    神経が興奮して痛みが脳に伝わるなら、神経が興奮しにくくしよう!という考えです。
    硝酸カリウムという成分を使って神経を鈍くします。

    2.凝固
    細管内の組織液を固まらせることで、神経に刺激を与えない方法です。
    グルタールアルデヒドという成分でタンパク質(組織液)を凝固させます。

    3.封鎖(結晶)
    細管の開口部を結晶で封鎖することで刺激が組織液に伝わらないようにします。
    これには乳酸アルミニウム、シュウ酸カルシウムなどが使われます。

    4.封鎖(被覆)
    細管の開口部をレジンなどでシールを貼るみたいに蓋をしてしまう方法です。


    今回は知覚過敏の成り立ち、痛みの伝わり方、防ぎ方のお話しをしました。次回は実際にみなさんが何からするべきなのか、またクリニックでできることをお伝えします。

    まずは知覚過敏なのか虫歯なのか診断するためにもぜひご来院ください。

     

  • 問診の大切さ 歯科医院でできる信頼づくり

    投稿者:clover

     

    今回は、歯科治療の第一歩である「問診」についてお話ししたいと思います。歯医者

    問診とは何をするもの?

    歯科医院での問診は、患者さまの「困っていること」や「症状」をお伺いし、治療の方向性を決めるためにとても大切なステップです。

    問診では以下のようなポイントをお聞きします:

    •痛みの場所や程度(例:「どの歯が痛みますか?」)

    •生活習慣(歯磨きの頻度や方法、食事の内容など)

    •全身の健康状態(既往歴や服薬中のお薬)

    これらの情報は、適切な検査や診断、治療計画を立てるための「地図」のような役割を果たします。当院ではこの問診について

    問診の工夫で患者さまの不安を軽減

    歯科医院自体に恐怖心があったり、歯科治療に不安を感じる患者さまは少なくありません。そのため、当院では問診時に以下の点に気をつけています:

    1.リラックスできる雰囲気作り

    問診の際は、なるべくゆっくりと話し、丁寧にお聞きします。また、診療に入る前にちょっとした雑談を交えることで、緊張をほぐします。

    2.わかりやすい説明

    専門用語を避け、患者さまが納得して治療を受けられるよう、わかりやすく説明を心がけています。

    3.「聞き上手」になる

    患者さまの言葉に耳を傾け、「どんな治療を希望されているのか」「何が不安なのか」をじっくりと伺います。

    問診が治療を変える!実際のケースより

    例えば、「右上の奥歯がズキズキ痛む」とおっしゃる患者さまの場合、問診で「冷たいものがしみる」「夜間に痛むことがある」などの症状を聞き取ります。この情報をもとに、虫歯や神経の炎症を疑い、X線検査や触診を行うことで、スムーズに治療へと繋げることができます。

    また、「歯茎が腫れている」という患者さまの場合は、問診で歯磨き習慣や生活習慣を伺い、歯周病が原因かどうかを調べます。このように、問診で得られる情報は診断の鍵となります。

    信頼関係が生まれる場所、それが問診

    問診はただ情報を集めるだけでなく、患者さまと私たちが信頼関係を築くための大切な時間です。お話しいただいた内容をもとに、患者さまの不安を取り除き、安心して治療を受けていただけるよう全力でサポートしています。

    これからも、患者さま一人ひとりの声に耳を傾け、安心して通える歯科医院を目指していきます。

     

    お気軽にご相談ください!

    登戸クローバー歯科・矯正歯科では、皆さまのお悩みを丁寧に伺い、最適な治療を提供しています。ご予約やお問い合わせはお電話やオンラインでお待ちしております!

     

    内田

  • 表面麻酔の香りを子供に選んでもらうと、麻酔への恐怖心が少なくなる?

    投稿者:clover

    表面麻酔(塗る麻酔)と局所麻酔(注射タイプの麻酔)についてお話しします。

    当院では局所麻酔をするときに、なるべく痛みのない麻酔をするために表面麻酔(塗る麻酔)と局所麻酔(注射タイプの麻酔)を併用しております。

    先月のブログで、「アメリカでの局所麻酔の過剰投与によるメトヘモグロビン血症」についてお話ししました。興味深い症例でしたのでご紹介しましたが、保険診療のないアメリカ特有(他にも歯科治療が高額で、治療を受けられない、という国では起こるかもしれませんが)の事例ですので、過度に表演麻酔を心配する必要はないかと思います。

     

    表面麻酔に関して言えば、他にも興味深い研究がありました。

    表面麻酔の香りを子供に選んでもらうと、麻酔への恐怖心が少なくなる、というものです。

    表面麻酔の香りを選ぶことで、関心が麻酔からそれることと、自分で主体的に選ぶことによる意識の変化する。。。のような内容だったと思います。どこかの大学病院の先生方が実験なさったのか、過去に読んだ論文で見かけ、なるほどと思った覚えがあります。

    同じ論文を見つけられたら、また詳しくご紹介したいと思います。

    ちなみに当院では、好意的に受け取られやすいバナナの香りの表面麻酔を使用中です。

    嗅いでみたい、においを試してみたい、という方がいらっしゃれば、ぜひ教えてくださいね。

     

    さて、表面麻酔は怖くないよ、という話をいたしましたが、薬である以上、まったく注意が必要ない、ということはありません。

    たとえば授乳中の方も、麻酔を行うにあたって、健常者と同じように注意をする点はございます。

     

    まず、薬剤成分の観点からの共通の注意事項としては、塗る麻酔に関してと注射に対しての麻酔のそれぞれにございます。

     

    表面麻酔(塗る麻酔)はエステル型局所麻酔薬であるアミノ安息香酸エチル(ベンゾカイン)が主成分として使用されており、局所麻酔薬としてよく使われているアミド型局所麻酔薬と比べてアレルギーを起こしやすいといわれていることから注意が必要です。

    麻酔薬の化学式

    ちなみに薬学的な細かい話をいたしますと

    局所麻酔薬の構造は,共通して 3つのパートから構成されていて、①芳香族残基,②アミノ基,③それら 2つを結ぶ中間鎖からなります。脂溶性の芳香族残基は細胞膜の通過に関係し,親水性のアミノ基は細胞膜を通過した薬剤がナトリウム(Na)チャネルに結合することで効果を発揮します。中間鎖はアミド結合,あるいは エステル結合しており,局所麻酔薬の分解に関係しています。局所麻酔薬はこの中間鎖の結合様式により,アミド型と エステル型に分類されます。アミド型は肝臓で分解され,現在使用されている局所麻酔薬の多くがこのタイプに属します。一方,エステル型は血漿コリンエステラーゼで分解される、という違いがあります。

    化学式は以下のものになります。

    表面麻酔と局所麻酔の併用は痛みを軽減しますが、必須ではないので、アレルギー体質で心配だわ、という方は、局所麻酔薬のみでの麻酔も可能ですのでご相談ください

    (アレルギーに関して、医科への対診もさせていただきますので、ぜひご相談ください。

     

    歯科医師 川端