抜歯の難易度・難易度の評価方法と総合病院への紹介
投稿者:clover
抜歯の難易度
「この歯は当院で抜けますよ」, 「この歯は大学病院で抜きましょう」歯科医院でこのようなフレーズを耳にしたことはありませんか?一体この差はどこから来るのでしょうか?
抜歯に使う器具
前提として, 抜歯に使う器具は主に「鉗子(Forceps)」と「挺子(Elevator, Hebel )」の2点です。
抜歯の対象となる歯の多くはこの2つのいずれか, もしくは両方を用いれば抜去できます。
抜歯の対象となる歯の多くはこの2つのいずれか, もしくは両方を用いれば抜去できます。
強い歯根彎曲(歯の根が強く曲がった状態)
根尖肥大(歯の根の先端が肥大している状態)
歯槽骨との癒着(歯と骨がくっついてしまっている状態)
埋伏歯(歯が骨に埋まっている状態)
などは先ほど挙げた2点の器具のみでは抜去できません。
上記以外の歯を抜く場合
このような状態の歯を抜くときには歯肉を切って骨を削り, 歯を分割する必要が出てきます。
この「切る」, 「削る」という過程は大きく腫れる原因となると同時に抜歯の難易度に関わってきます。
なぜならば, 歯の植っている顎骨の周りには神経や血管が通っており, 歯肉を切ったり骨を削ったりすることはそれらの損傷リスクがあるからです。
この「切る」, 「削る」という過程は大きく腫れる原因となると同時に抜歯の難易度に関わってきます。
なぜならば, 歯の植っている顎骨の周りには神経や血管が通っており, 歯肉を切ったり骨を削ったりすることはそれらの損傷リスクがあるからです。
総合病院への紹介
総合病院への紹介が必要になるのはほとんどの場合, 上下顎の親知らず(智歯)の抜歯です。
歯科医院では緊急事態に備えて, 必要最低限の備え・対応策は整えてありますが, 大出血や明らかな神経損傷が起きた場合, 安全かつ迅速に高度な対応ができるのはやはり医科を併設している総合病院の口腔外科です。
また, 口腔外科ではそういったいわゆる「難抜歯」を専門としている為, 毎日そのような症例が集まってくるので慣れているということ利点もあります。
また, 血友病や血小板減少性紫斑病, 重度の嘔吐反射, 歯科恐怖症など全身疾患のある患者様の抜歯も安全性を考慮して医科歯科連携のある総合病院をご紹介することが多いです。
歯科医院では緊急事態に備えて, 必要最低限の備え・対応策は整えてありますが, 大出血や明らかな神経損傷が起きた場合, 安全かつ迅速に高度な対応ができるのはやはり医科を併設している総合病院の口腔外科です。
また, 口腔外科ではそういったいわゆる「難抜歯」を専門としている為, 毎日そのような症例が集まってくるので慣れているということ利点もあります。
また, 血友病や血小板減少性紫斑病, 重度の嘔吐反射, 歯科恐怖症など全身疾患のある患者様の抜歯も安全性を考慮して医科歯科連携のある総合病院をご紹介することが多いです。
抜歯の難易度の評価方法
しかし, 上に挙げたような, 歯肉を切って骨を削り, 歯を分割するような抜歯全てが歯科医院では抜けない症例かというと必ずしもそうではありません。
総合病院への紹介またはかかりつけ歯科医院での抜歯
智歯抜歯では, その位置と深さの状態から抜歯の難易度を評価するWinterの分類という基準が存在します。
歯科医院での抜歯の可否はパノラマx線レントゲン写真, CTを撮影した上で歯と神経(下歯槽神経, 下歯槽動静脈)の距離や歯と副鼻腔(上顎洞)までの距離を確認し, この分類に基づいて検討されます。
一般的に骨深くに埋伏していると上顎洞(副鼻腔の一つ)や下顎管(神経と血管の入っている管)との近接リスクが高まる為, またはそうでなくても, 歯の出てくるスペースが極度に狭く, 手術時間がかなりの長時間になることが予想される症例は歯科医院での抜歯は難しいと言えます。
しかしながら, 安全性やリスクを十分検討・評価した上で歯科医院で抜歯可能な歯は歯科医院で抜歯することには利点も存在します。
それは抜歯の前後の経緯や患者様のヒストリーを術者が把握している点です。
抜歯を大きい病院へ紹介・依頼した場合, どんな歯でも安全に抜くことまではできますが, その後の治療を継続することはできません。
かかりつけなどの別の歯科医院でしなければなりません。
また, 一般的に総合病院は開院時間が短く, 抜歯よりも重篤な疾患の手術も多い為, 抜歯の予約が取りづらいという難点もあります。
以上から, 継続した切れ目のない治療を行う為にはリスクが低いのであれば, 一つの歯科医院で完結した方が良いと言えます。
歯科医院での抜歯の可否はパノラマx線レントゲン写真, CTを撮影した上で歯と神経(下歯槽神経, 下歯槽動静脈)の距離や歯と副鼻腔(上顎洞)までの距離を確認し, この分類に基づいて検討されます。
一般的に骨深くに埋伏していると上顎洞(副鼻腔の一つ)や下顎管(神経と血管の入っている管)との近接リスクが高まる為, またはそうでなくても, 歯の出てくるスペースが極度に狭く, 手術時間がかなりの長時間になることが予想される症例は歯科医院での抜歯は難しいと言えます。
しかしながら, 安全性やリスクを十分検討・評価した上で歯科医院で抜歯可能な歯は歯科医院で抜歯することには利点も存在します。
それは抜歯の前後の経緯や患者様のヒストリーを術者が把握している点です。
抜歯を大きい病院へ紹介・依頼した場合, どんな歯でも安全に抜くことまではできますが, その後の治療を継続することはできません。
かかりつけなどの別の歯科医院でしなければなりません。
また, 一般的に総合病院は開院時間が短く, 抜歯よりも重篤な疾患の手術も多い為, 抜歯の予約が取りづらいという難点もあります。
以上から, 継続した切れ目のない治療を行う為にはリスクが低いのであれば, 一つの歯科医院で完結した方が良いと言えます。
Winterの分類
最後に, ご興味のある方の為にWinterの分類をまとめておきます。
この分類は, 上下に分かれていて, 下顎の場合,
この分類は, 上下に分かれていて, 下顎の場合,
A. 第二大臼歯(前から7番目の歯)と下顎枝前縁との距離
(=埋伏している歯が取り出せスペース)
B. 第二大臼歯の咬合面に対する埋伏の深さ
C. 智歯の姿勢
以上の3要素で抜歯の難易度を評価しています。
各項目には以下のような小分類があります。
各項目には以下のような小分類があります。
Winterの分類・小分類
歯の神経の場所
下顎の場合
第二大臼歯と下顎枝前縁の間のスペース Class Ⅱ: 智歯の歯冠近遠心径より大きなスペースがある
Class Ⅱ: スペースはあるが, 智歯の歯冠の近遠心径より小さいもの
Class Ⅲ: スペースがほとんどなく, 智歯の大部分が下顎枝の中にあるもの
B. 第二大臼歯の咬合面に対する埋伏の深さ
Position A: 埋伏歯の最上点が第二大臼歯の咬合面またはそれより上にある
Position B: 埋伏智歯の最上点が第二大臼歯の咬合面より下で, 第二大臼歯の歯頸部より上
Position C: 埋伏智歯の最上点が第二大臼歯の歯頸部にある
C. 第二大臼歯の歯軸のに対する埋伏智歯の歯軸の方向 1. 垂直位 2. 水平位 3. 逆位 4. 近心傾斜 5. 遠心傾斜 6. 頰側傾斜 7. 舌側傾斜
Class Ⅱ: スペースはあるが, 智歯の歯冠の近遠心径より小さいもの
Class Ⅲ: スペースがほとんどなく, 智歯の大部分が下顎枝の中にあるもの
B. 第二大臼歯の咬合面に対する埋伏の深さ
Position A: 埋伏歯の最上点が第二大臼歯の咬合面またはそれより上にある
Position B: 埋伏智歯の最上点が第二大臼歯の咬合面より下で, 第二大臼歯の歯頸部より上
Position C: 埋伏智歯の最上点が第二大臼歯の歯頸部にある
C. 第二大臼歯の歯軸のに対する埋伏智歯の歯軸の方向 1. 垂直位 2. 水平位 3. 逆位 4. 近心傾斜 5. 遠心傾斜 6. 頰側傾斜 7. 舌側傾斜
上顎の場合
上顎の場合は下記のような分類となっています。
第二大臼歯に対する智歯の埋伏の深さ
Class A : 埋伏智歯の最下点が第二大臼歯の咬合面と同じ高さにある
Class B : 埋伏智歯の最下点が第二大臼歯の咬合面と歯頸部の間の高さにある
Class C : 埋伏智歯の最下点が第二大臼歯の歯頸部の上にある
B. 第二大臼歯の歯軸に対する埋伏歯の歯軸能の方向 1. 垂直位 2. 水平位 3. 近心傾斜 4. 遠心傾斜 5. 逆位 6. 頰側傾斜 7. 舌側傾斜
C. 埋伏智歯と上顎洞との関係 1. 上顎洞近接あり(埋伏智歯と上顎洞との間の骨の厚さ2 mm以下) 2. 上顎洞近接なし(2 mm以上の骨の厚みあり)
第二大臼歯に対する智歯の埋伏の深さ
Class A : 埋伏智歯の最下点が第二大臼歯の咬合面と同じ高さにある
Class B : 埋伏智歯の最下点が第二大臼歯の咬合面と歯頸部の間の高さにある
Class C : 埋伏智歯の最下点が第二大臼歯の歯頸部の上にある
B. 第二大臼歯の歯軸に対する埋伏歯の歯軸能の方向 1. 垂直位 2. 水平位 3. 近心傾斜 4. 遠心傾斜 5. 逆位 6. 頰側傾斜 7. 舌側傾斜
C. 埋伏智歯と上顎洞との関係 1. 上顎洞近接あり(埋伏智歯と上顎洞との間の骨の厚さ2 mm以下) 2. 上顎洞近接なし(2 mm以上の骨の厚みあり)