表面麻酔の香りを子供に選んでもらうと、麻酔への恐怖心が少なくなる?
表面麻酔(塗る麻酔)と局所麻酔(注射タイプの麻酔)についてお話しします。
当院では局所麻酔をするときに、なるべく痛みのない麻酔をするために表面麻酔(塗る麻酔)と局所麻酔(注射タイプの麻酔)を併用しております。
先月のブログで、「アメリカでの局所麻酔の過剰投与によるメトヘモグロビン血症」についてお話ししました。興味深い症例でしたのでご紹介しましたが、保険診療のないアメリカ特有(他にも歯科治療が高額で、治療を受けられない、という国では起こるかもしれませんが)の事例ですので、過度に表演麻酔を心配する必要はないかと思います。
表面麻酔に関して言えば、他にも興味深い研究がありました。
表面麻酔の香りを子供に選んでもらうと、麻酔への恐怖心が少なくなる、というものです。
表面麻酔の香りを選ぶことで、関心が麻酔からそれることと、自分で主体的に選ぶことによる意識の変化する。。。のような内容だったと思います。どこかの大学病院の先生方が実験なさったのか、過去に読んだ論文で見かけ、なるほどと思った覚えがあります。
同じ論文を見つけられたら、また詳しくご紹介したいと思います。
ちなみに当院では、好意的に受け取られやすいバナナの香りの表面麻酔を使用中です。
嗅いでみたい、においを試してみたい、という方がいらっしゃれば、ぜひ教えてくださいね。
さて、表面麻酔は怖くないよ、という話をいたしましたが、薬である以上、まったく注意が必要ない、ということはありません。
たとえば授乳中の方も、麻酔を行うにあたって、健常者と同じように注意をする点はございます。
まず、薬剤成分の観点からの共通の注意事項としては、塗る麻酔に関してと注射に対しての麻酔のそれぞれにございます。
表面麻酔(塗る麻酔)はエステル型局所麻酔薬であるアミノ安息香酸エチル(ベンゾカイン)が主成分として使用されており、局所麻酔薬としてよく使われているアミド型局所麻酔薬と比べてアレルギーを起こしやすいといわれていることから注意が必要です。
麻酔薬の化学式
ちなみに薬学的な細かい話をいたしますと
局所麻酔薬の構造は,共通して 3つのパートから構成されていて、①芳香族残基,②アミノ基,③それら 2つを結ぶ中間鎖からなります。脂溶性の芳香族残基は細胞膜の通過に関係し,親水性のアミノ基は細胞膜を通過した薬剤がナトリウム(Na)チャネルに結合することで効果を発揮します。中間鎖はアミド結合,あるいは エステル結合しており,局所麻酔薬の分解に関係しています。局所麻酔薬はこの中間鎖の結合様式により,アミド型と エステル型に分類されます。アミド型は肝臓で分解され,現在使用されている局所麻酔薬の多くがこのタイプに属します。一方,エステル型は血漿コリンエステラーゼで分解される、という違いがあります。
化学式は以下のものになります。
表面麻酔と局所麻酔の併用は痛みを軽減しますが、必須ではないので、アレルギー体質で心配だわ、という方は、局所麻酔薬のみでの麻酔も可能ですのでご相談ください
(アレルギーに関して、医科への対診もさせていただきますので、ぜひご相談ください。
歯科医師 川端