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子供の指しゃぶりが歯並びに与える影響と対処法

歯に関するブログ 2025年10月16日(木)

指しゃぶりの基本と子供の発達における役割

子供の指しゃぶりは、生後2〜3カ月頃から見られる自然な行為です。この時期の赤ちゃんにとって、口は周りの物を知る最も重要な感覚器官となっています。何でも口に入れて確かめようとする姿は、多くの親が目にする光景でしょう。

実は、赤ちゃんはまだお母さんの胎内にいる時から、すでに指しゃぶりを始めていることが明らかになっています。これは本能的な行動であり、口を動かす練習をしているのです。

乳児期の指しゃぶりは、赤ちゃんの心を落ち着かせる重要な役割を果たしています。お母さんのおっぱいを吸っている状態に近い安心感を得られるため、精神的な安定剤のような役割を果たすのです。

幼児期になると、言葉によって自分の気持ちを伝えられるようになるため、本来なら指しゃぶりの必要性は徐々に薄れていきます。3歳くらいまでは多くの子どもが指しゃぶりをしていますが、心身の発達や周囲の環境への慣れとともに、自然と減っていくものです。

指しゃぶりが歯並びに与える影響とそのメカニズム

指しゃぶりは、いつまで続けるかによって歯並びへの影響が大きく変わってきます。3歳までの指しゃぶりであれば、歯並びへの影響はそれほど心配する必要はありません。

しかし、3歳を過ぎても指しゃぶりが続くと、歯並びに様々な問題が生じる可能性が高くなります。特に5〜6歳頃の永久歯が生え始める時期まで続けると、歯並びに長期的な影響を及ぼすことがあるのです。

指しゃぶりによって生じる代表的な歯並びの問題には、以下のようなものがあります。

  • 上顎前突(じょうがくぜんとつ):いわゆる「出っ歯」の状態です。指で前歯を前に押し続けることで、上の前歯が前に突き出してしまいます。
  • 開咬(かいこう):上下の歯をかみ合わせたとき、前歯の間に隙間ができてしまう状態です。これにより、前歯でものを噛み切れなくなります。
  • 狭窄歯列弓(きょうさくしれつきゅう):指を吸い込むときに頬の筋肉を収縮させるため、上あごの歯並びのアーチが狭くなり、V字型になってしまいます。
  • 叢生(そうせい):歯並びのアーチが狭くなることで、歯がきれいに並ばずガタガタになる状態です。

指しゃぶりを長期間続けると、「お口ポカン」の状態になりやすく、口呼吸の習慣も身についてしまいます。さらに、上下の前歯の間から舌も出てくるようになり、舌癖(ぜつへき)も誘発します。

こうした問題が複合的に起こると、口元が前に出て、顔の形にも影響が表れることがあるのです。

年齢別にみる指しゃぶりの影響と対応方法

指しゃぶりの影響は、子どもの年齢によって大きく異なります。年齢別に適切な対応を考えていきましょう。

乳児期(0〜1歳)の指しゃぶり

この時期の指しゃぶりは、哺乳から自分で食べることへの移行期間として必要なものです。赤ちゃんの成長過程として温かく見守ってあげましょう。

長時間にわたる指しゃぶりが気になる場合は、授乳の時間や量が足りていない可能性もあります。授乳の時間を少し長くしたり、ミルクの量を増やしたりすることで改善することもあります。

幼児期前半(1〜3歳)の指しゃぶり

この時期は指しゃぶりの原因を考えて対処していくことが大切です。寂しさやストレスから指しゃぶりをしている場合は、スキンシップを増やしたり、遊びの時間を充実させたりすることで改善できることがあります。

親子のスキンシップの様子

この年齢までの指しゃぶりは歯並びにそれほど影響を与えないことが多いですが、癖になってしまうと後々の問題につながる可能性があります。

子どもが眠るまで手を握っていてあげるなど、優しく寄り添う対応が効果的です。

幼児期後半(4〜5歳)の指しゃぶり

4歳を過ぎても指しゃぶりが続く場合は、歯並びへの影響が出始める可能性が高くなります。この時期になると、子ども自身の自我も芽生えてくるため、大人が無理に止めさせようとすると逆効果になることもあります。

保育園や幼稚園での友達との交流を通じて、社会性が育まれていくと、自然と指しゃぶりは減っていくものです。友達との関わりを大切にし、生活を充実させることで、子ども自身が「指しゃぶりをやめよう」という意識を持つようになります。

それでも続く場合は、小児歯科を受診して専門的なアドバイスを受けることも検討しましょう。

指しゃぶりをやめさせるための効果的な方法

子どもの指しゃぶりをやめさせるには、強制的に止めさせるのではなく、子どもの心理や発達段階に合わせたアプローチが大切です。

小児科と小児歯科の保健検討委員会によると、習慣化してしまった子どもの指しゃぶりをやめさせるには、以下のような方法が効果的とされています。

⚫︎生活リズムを整える:規則正しい生活習慣を身につけることで、精神的な安定につながります。

⚫︎外遊びや運動で体力を使わせる:十分に体を動かすことで、ストレスを発散させ、良質な睡眠につながります。

⚫︎スキンシップを増やす:親子のふれあいを増やすことで、子どもの心の安定につながります。

⚫︎指しゃぶりに関する絵本を読む:【ゆびたこ】の絵本が有名かと思います。川端の周囲でもこちらを読み聞かせしたら指しゃぶりをやめられた!という声を聞きますが、怖くなってしまうお子さんもいるようなので、親御さんが先に一読することをお勧めいたします。

⚫︎達成感を味わう経験を増やす:「できた!」という体験を積み重ねることで、自信がつき、指しゃぶりに頼らなくなります。

子どもが外で遊ぶ様子

指しゃぶりをやめさせる際に、叱ったり、恥ずかしいことだと感じさせたりするのは逆効果です。子どもの自尊心を傷つけないよう、肯定的な声かけを心がけましょう。

「もう大きくなったね」「お兄ちゃん(お姉ちゃん)になったね」など、成長を認める言葉をかけることで、子ども自身が「もう指しゃぶりはやめよう」と思えるようになります。

どうしても指しゃぶりが止まらない場合は、小児歯科で相談してみましょう。

歯科医院での対応と矯正治療について

指しゃぶりによって歯並びに問題が生じてしまった場合、歯科医院での適切な対応が必要になることがあります。特に矯正治療については、早期に始めることで治療の負担を軽減できる可能性があります。

小児矯正の考え方と時期

従来の矯正治療では、永久歯がすべて生えてから(12歳以上)、多くの場合歯を抜いて治療が行われてきました。しかし、非抜歯矯正の考え方では、不正咬合の原因を取り除いたり、成長しきれなかった顎を大きくしたりすることで、歯を抜かずに治療することを目指します。

非抜歯治療で最も効果的な時期は、永久歯が生え始める6〜7歳頃に始める矯正早期治療と、10〜12歳の多くの永久歯が生えた頃に行う2期治療を組み合わせる方法です。

早期治療を行うことで、多くの場合、非抜歯での治療が可能になります。実際に、早期治療を行った患者さまの95%は非抜歯での治療が行われているというデータもあります。

指しゃぶりによる歯並びの問題と矯正治療

指しゃぶりによって生じた上顎前突(出っ歯)や開咬などの問題は、適切な矯正治療によって改善することができます。特に成長期の子どもの場合は、顎の成長をコントロールすることで、より効果的な治療が可能です。

また、指しゃぶりなどの癖によって生じた問題の場合、まずはその癖を止めることが重要です。癖が続いている状態で矯正治療を行っても、再発のリスクが高くなります。

指しゃぶり以外の歯並びに影響する習慣と予防法

指しゃぶり以外にも、歯並びに悪影響を及ぼす習慣はいくつかあります。これらの習慣を知り、早めに対策することで、将来的な歯並びの問題を予防することができます。

唇を噛む癖

唇を噛む癖も、出っ歯の原因になることがあります。下唇を噛むと、上の前歯が外側に出て、下の前歯は内側に倒れ込むような力がかかります。この状態が続くと、重度の出っ歯になってしまうことがあります。

唇を噛む癖に気づいたら、子どもに優しく注意し、意識的にやめるよう促しましょう。

爪を噛む癖

爪や鉛筆など、硬いものを噛む癖も歯並びに悪影響を及ぼします。唇を噛むのと同様に、出っ歯や全体的な歯並びの乱れにつながるリスクがあります。

また、歯がすり減って噛み合わせが悪くなったり、口のトラブルにつながったりすることもあるため、早めに改善することが大切です。

舌を突き出す癖(舌癖)

唾液を飲み込む際に、上下の歯で舌を挟む癖がある子どもも多くいます。この舌癖があると、上下の歯のすき間が目立つ開咬や、全体的な歯並びの乱れにつながることがあります。

改善には、ナイトガードなどの装置を使って、舌が前歯にかかる圧力を防ぐ方法があります。

口呼吸

本来、人間の呼吸は鼻呼吸が望ましいのですが、幼少期には口呼吸をしている子どもも多くいます。口呼吸は下顎に加わる力が強くなることで、受け口のリスクにつながります。

また、開咬や叢生などさまざまな不正咬合を引き起こす可能性があるため、早めに改善することが大切です。

口呼吸の原因として、アレルギー性鼻炎やアデノイド肥大などが考えられます。気になる場合は、小児科や耳鼻科での受診も検討しましょう。

まとめ:子どもの健やかな歯の発育のために

指しゃぶりは子どもの成長過程で見られる自然な行為ですが、3歳を過ぎても続くと歯並びに影響を及ぼす可能性があります。特に5〜6歳の永久歯が生え始める時期まで続くと、上顎前突(出っ歯)や開咬などの問題が生じることがあります。

指しゃぶりをやめさせるには、子どもの心理や発達段階に合わせたアプローチが大切です。生活リズムを整え、外遊びや運動で体力を使わせ、親子のスキンシップを増やすことが効果的です。

すでに歯並びに問題が生じている場合は、早期に小児歯科を受診することをおすすめします。特に6〜7歳頃からの矯正早期治療は、非抜歯での治療が可能になる可能性が高まります。

また、指しゃぶり以外にも、唇を噛む癖、爪を噛む癖、舌癖、口呼吸など、歯並びに影響する習慣に注意し、早めに対策することが大切です。

子どもの健やかな歯の発育のためには、日頃からの観察と適切な対応が重要です。気になることがあれば、専門家に相談し、適切なアドバイスを受けることをおすすめします。

登戸クローバー歯科・矯正歯科では、子どもの歯並びの問題に対して、なるべく歯を抜かない矯正治療を推奨しています。「MEAW(Multiloop Edgewise Arch Wire)」を採用し、お子様の成長に合わせた適切な治療を提供しています。お子様の歯並びでお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。

川端|登戸クローバー歯科

登戸クローバー歯科・矯正歯科 歯科医師 川端 綾香

経歴・表彰


新潟大学歯学部 卒業
補綴優秀賞 受賞
東京医科歯科大学 臨床研修 修了

メッセージ


お口に違和感や症状があると、日々の生活に集中しづらくなることもあるかと思います。そんなお悩みを解消し、快適な毎日をサポートしたいと思っています。分かりやすい説明と丁寧な治療を心掛けておりますので、どんな小さなことでもお気軽にご相談ください。