インプラントとブリッジの基本的な違い

歯に関するブログ 2025年08月11日(月)

歯を失った時、その後の治療法として主に検討されるのがインプラントとブリッジです。両者はどのように違うのでしょうか。

インプラントは、失った歯の部分に人工の歯根(チタン製)を顎の骨に埋め込み、その上に人工歯を装着する治療法です。一方、ブリッジは失った歯の両隣の健康な歯を削り、それらを支えとして人工歯を橋渡しするように固定します。

この基本的な違いが、治療後の機能性や見た目、そして長期的な口腔内の健康状態に大きな影響を与えるのです。

治療方法と手術の有無

インプラント治療は外科手術を伴います。歯肉を切開し、顎の骨に穴を開けて人工歯根を埋入するという手順を踏みます。

これに対してブリッジ治療は、両隣の健康な歯を支えとするため、それらの歯を全周にわたって1〜1.5mm程度削る必要があります。外科的な処置は必要ありませんが、健康な歯を削ることになるのです。

高血圧などの全身疾患がある場合、インプラント治療は難しいケースがあります。一方、ブリッジは全身状態による制約を受けにくいという特徴があります。

手術の有無は治療選択において重要なポイントです。外科処置に抵抗がある方や、全身疾患をお持ちの方は、ブリッジが適している場合が多いでしょう。

噛む力と機能性の違い

歯科医師として長年患者さまを診てきた経験から言えることですが、インプラントは噛む力において天然歯とほぼ同等の機能を発揮します。

具体的には、インプラントは天然歯と比較して最大咬合力が同等かそれ以上、咀嚼能率(物を噛み砕く効率)が約80%と言われています。これは人工歯根が顎の骨にしっかりと結合するためです。

一方、ブリッジは天然歯と比較して最大咬合力は同等ですが、咀嚼能率は約60%程度です。これは、失った歯の部分に加わる力を両隣の支台歯で負担するためです。

どうしてこのような差が生じるのでしょうか?

インプラントは人工歯根が骨と結合(オッセオインテグレーション)することで、力を直接顎の骨に伝えます。一方、ブリッジは両隣の歯に負担がかかるため、長期的には支台歯に過度な負担がかかり、歯の寿命に影響することがあるのです。

周囲の歯への影響

インプラントの最大の利点は、周囲の健康な歯に一切手を加えないことです。失った歯の部分だけで治療が完結するため、他の歯に負担をかけません。

これに対してブリッジは、両隣の健康な歯を削って支台とする必要があります。健康な歯を削ることで、将来的に虫歯や神経の問題が生じるリスクが高まります。

歯を削ることは、一度行うと元には戻せません。特に若い方や、両隣の歯が健康な場合は、この点を十分に考慮する必要があるでしょう。

私の臨床経験では、ブリッジの支台歯となった歯が後に問題を起こし、結果的にインプラント治療が必要になるケースも少なくありません。長期的な口腔内の健康を考えると、この点は非常に重要です。

どうですか?ご自身の大切な歯を削るかどうかは、慎重に考えたいポイントですよね。

治療期間と通院回数

インプラント治療とブリッジ治療では、治療完了までの期間に大きな差があります。

インプラント治療は、通常6ヶ月〜1年程度の期間を要します。これは人工歯根を埋入した後、それが顎の骨としっかり結合するまで待つ必要があるためです。

具体的には、下顎で3ヶ月以上、上顎で6ヶ月以上の治癒期間が必要とされています。この間、仮歯を装着して過ごすことになります。

一方、ブリッジ治療は比較的短期間で完了します。通常2〜3週間程度で治療が終わります。両隣の歯を削った後、型取りをして技工所でブリッジを作製し、装着するという流れです。

時間的な制約がある方や、早く治療を終えたい方にとっては、ブリッジのほうが魅力的に映るかもしれません。しかし、長期的な視点で考えることも大切です。

費用の違い

治療費用は、多くの患者さまにとって重要な検討ポイントです。

インプラント治療は自費診療となり、1本あたり約25〜50万円が相場です。これには、診断・検査費用、手術費用、人工歯根代、上部構造(被せ物)代などが含まれます。

一方、ブリッジ治療は保険診療が適用可能で、素材によって費用が異なります。保険適用の場合、1〜2万円程度で治療が可能です。自費診療のブリッジを選択すると、30万円程度かかります。

初期費用だけを見ると、ブリッジのほうが経済的に負担が少ないことは確かです。しかし、長期的な維持費用や、将来的に問題が生じた場合の再治療費用も考慮する必要があります。

インプラントは初期投資は高いものの、適切にケアすれば長期間使用できるため、トータルコストでは必ずしもブリッジより高くなるとは限りません。

長期的な安定性と寿命

インプラントとブリッジでは、平均的な寿命に差があります。

インプラント治療の10年生存率(10年後も問題なく使用できている割合)は90%以上と報告されています。適切なケアを行えば、20年以上使用できるケースも珍しくありません。

一方、ブリッジの10年生存率は50〜70%程度です。支台歯に負担がかかることや、連結部分の清掃が難しいことなどが原因で、トラブルが生じやすくなります。

20年以上前に施術したインプラントが今でも問題なく機能している患者さまが多くいらっしゃいます。83歳の患者さまでも、インプラント治療を行い、快適に過ごされている例もあります。

長期的な安定性を重視するなら、インプラントに軍配が上がるでしょう。

メンテナンスと清掃性

日々のケアのしやすさも、治療法選択の重要なポイントです。

インプラントは基本的に天然歯と同様のケアで維持できます。通常の歯磨きとフロスによる清掃で十分です。ただし、インプラント周囲炎(インプラント周囲の感染症)を予防するために、定期的なメンテナンスは欠かせません。

一方、ブリッジは構造が複雑なため、清掃が難しくなります。特に、人工歯と歯茎の間や連結部分は食べ物が詰まりやすく、清掃が行き届かないと虫歯や歯周病のリスクが高まります。

清掃用の特殊なフロスや歯間ブラシを使用する必要があり、日々のケアに手間がかかることを覚悟しなければなりません。

毎日のケアを簡単に済ませたい方には、インプラントのほうが向いているかもしれません。

審美性の比較

見た目の美しさも、多くの患者さまが気にするポイントです。特に前歯部の治療では、審美性が重要な判断基準となります。

インプラントもブリッジも、上部構造(被せ物)の素材によって審美性が決まります。セラミック素材を使用すれば、どちらも自然な見た目を実現できます。

ただし、インプラントのほうが天然歯に近い形態を再現しやすいという利点があります。特に前歯部では、歯茎との境目の自然さがより重要になりますが、インプラントは単独で立っているため、この部分の審美性を高めやすいのです。

ブリッジは連結部分があるため、清掃性を確保するために歯茎との間にわずかな隙間を設ける必要があり、食べ物が詰まりやすくなることがあります。

最終的な審美性は、歯科医師の技術や使用する材料によっても大きく左右されます。信頼できる歯科医師と十分に相談することが大切です。

インプラントとブリッジ、あなたに最適なのはどちら?

では、インプラントとブリッジ、どちらを選ぶべきなのでしょうか?

インプラントがおすすめなのは、以下のような方です:

  • 周囲の健康な歯を削りたくない方
  • 長期的な安定性を重視する方
  • 天然歯に近い噛み心地を求める方
  • 清掃性の良さを重視する方
  • 初期費用が高くても長期的なメリットを重視できる方

一方、ブリッジがおすすめなのは:

  • 外科手術を避けたい方
  • 全身疾患があり、インプラント手術が難しい方
  • 短期間で治療を完了させたい方
  • 初期費用を抑えたい方
  • 骨の量が少なく、インプラント治療に追加処置が必要な方

最終的な判断は、口腔内の状態、全身の健康状態、ライフスタイル、予算など、様々な要素を総合的に考慮して行う必要があります。

私たち歯科医師は、患者さま一人ひとりの状況に合わせた最適な治療法を提案することを心がけています。どちらが絶対に良いというわけではなく、その方にとって最適な選択肢を見つけることが大切なのです。

まとめ:インプラントとブリッジの違いを理解して最適な選択を

インプラントとブリッジ、それぞれに特徴があることがおわかりいただけたでしょうか。

インプラントは人工歯根を埋め込む外科処置が必要ですが、周囲の歯に負担をかけず、天然歯に近い機能と見た目を長期間維持できるという大きなメリットがあります。

一方、ブリッジは外科処置が不要で短期間・低コストで治療できますが、健康な歯を削る必要があり、長期的には支台歯にトラブルが生じるリスクがあります。

どちらの治療法も、それぞれの患者さまの状況によって最適な選択肢は異なります。大切なのは、信頼できる歯科医師と十分に相談し、自分自身の口腔内の状態や生活スタイル、予算などを考慮して判断することです。

私たち登戸クローバー歯科・矯正歯科では、患者さま一人ひとりに合わせた最適な治療プランをご提案しています。インプラントやブリッジでお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。

あなたの大切な歯の健康と笑顔のために、最適な選択をサポートいたします。

詳しくはお気軽にお問い合わせください。

監修者情報

鈴木 聡(すずき さとし)先生
医療法人社団 緑幸会 登戸クローバー歯科・矯正歯科 理事長

略歴
広島大学歯学部卒業後、複数の歯科医院で研鑽を積み、幅広い症例に対応。現在は神奈川県川崎市にある「登戸クローバー歯科・矯正歯科」の院長を務めるとともに、登戸・東京都世田谷区桜新町に分院を展開しており、統括する医療法人社団 緑幸会の理事長として、地域の歯科医療に貢献している。

専門分野
矯正歯科・インプラント治療・審美歯科
特に、抜歯に頼らない「非抜歯矯正」や、目立ちにくい「マウスピース矯正(インビザライン)」に注力し、見た目と機能の両立を図る治療に力を入れている。

所属学会等

  • 日本矯正歯科学会 会員
  • 日本口腔インプラント学会 会員

監修者からのひとこと
患者さまの「見た目」と「噛める機能」の両立を大切にし、年齢やライフスタイルに合わせた矯正治療を心がけています。大人の方でも安心して始められる治療法をご提案いたします