歯周病治療におけるスケーリングの影響と歯科衛生士の役割
歯周病治療において、スケーリングやルートプレーニング(SRP)は、これまで基本的な治療として行われてきました。
歯石は炎症を持続させる要因となるため、確実な除去が重要であると学んできました。
しかし、実習や臨床での指導を受ける中で、処置のやり方によっては歯や歯周組織に負担をかけてしまう可能性があることを意識するようになりました。
スケーリングは歯石除去を目的とした処置ですが、過度に行うことでエナメル質を傷つけてしまう場合があります。
また、SRPやルートプレーニングでは、歯根面のセメント質や象牙質が削除されることは避けられません。
セメント質には歯肉と歯を結びつけているシャーピー線維が付着しており、この部分が失われることで歯肉との付着が弱くなり、歯肉退縮の原因になると考えられています。
セメント質の厚みは歯頸部で約20〜50μm、歯根中央部でも約150〜250μmと非常に薄いことが分かっています。
一方、スケーリング時の歯質削除量は、超音波スケーラーで約11.6μm、キュレットスケーラーでは約108.9μm、エアスケーラーでも約93.5μmとされており、処置方法によってはセメント質が大きく失われる可能性があります。
これらの数値を知り、想像以上に歯質が削除されていることに気づかされました。
また、歯肉退縮は専門的処置だけでなく、日常のセルフケアとも関係しています。
歯間ブラシやデンタルフロスなどの補助的清掃用具は有効ですが、サイズが合っていなかったり、強い力で頻回に使用したりすると、歯肉への刺激となることがあります。
患者さまに指導を行う中で、清掃意識が高い方ほどやりすぎてしまっているケースもあり、注意が必要だと感じました。
歯肉退縮が進行すると根面が露出し、根面カリエスや知覚過敏を引き起こしやすくなります。
そのため歯科衛生士は、歯石を除去することだけを目的とするのではなく、歯質や歯周組織をできるだけ守る視点を持つことが重要です。
バイオフィルムの除去を意識した侵襲の少ない処置と、患者一人ひとりに合ったセルフケア指導を行うことが、今後の歯周病治療に求められていると考えました。

歯周病におけるインフェクションコントロールについて
1.歯周病とは
歯周病とは、歯に付着した細菌、特にバイオフィルムを原因として発症する感染性疾患です。
細菌に対する生体の防御反応として歯肉に炎症が生じ、これが慢性的に続くことで歯周組織の破壊が進行します。
初期段階である歯肉炎を放置すると炎症は拡大し、歯周ポケットは次第に深くなっていきます。
2.歯周病の原因と病態
歯周病の原因は、歯面に付着した細菌の集団であるバイオフィルムです。
歯肉縁上にはプラークが付着し、歯肉縁下には成熟したバイオフィルムが形成されます。
これらに対する生体の防御反応として炎症が起こり、歯肉の腫脹や出血、歯槽骨の吸収につながります。
歯周病は咬合とは直接的な原因関係はなく、主な原因は細菌感染です。
3.歯周病治療におけるインフェクションコントロール
歯周病治療におけるインフェクションコントロールの基本は、原因であるバイオフィルムの除去です
ペリオクリンなどの薬剤は補助的な役割を果たすものであり、薬剤のみで歯周病を治すことはできません。
歯科衛生士が行うスケーリングやルートプレーニング、PMPRは、歯肉縁下のバイオフィルムを機械的に除去するために重要な処置です。
4.セルフケアとプロフェッショナルケア
歯肉縁上のプラークは、患者自身によるセルフケアでのプラークコントロールが基本となります。
一方で、歯肉縁下のバイオフィルムはセルフケアのみで除去することが難しく、歯科衛生士によるプロフェッショナルケアが不可欠です。
歯科衛生士は適切なブラッシング指導や歯間清掃指導を行い、患者が継続してセルフケアに取り組めるよう支援します。
5.メインテナンスの重要性
歯周病は一度進行すると治癒する疾患ではなく、一時的に症状が改善しても再発する可能性があります。
そのため、定期的なメインテナンスによってバイオフィルムを継続的に除去し、歯周組織の状態を管理することが重要です。
歯科衛生士による専門的管理と患者自身のセルフケアを両立させることが、歯周病におけるインフェクションコントロールの基本です。

予防歯科の新たなアプローチGBT
従来の歯周病治療や歯面掃除(歯石除去)とは異なる、より効果的で身体に優しい予防システム
GBT(Guided Biofilm Therapy)の8つのプロトコールについてお話ししていきたいと思います。
Guided Biofilm Therapy(GBT)は、予防・プロフィラキシス(口腔清掃)・治療を目的とした、エビデンスに基づき、症例に合わせて体系的・段階的に実施できる革新的なプロトコールです。
従来のクリーニングでは必要部位の50%しかバイオフィルムの除去ができていないと言われていますがプロトコールに沿って進めれば100%のクリーニングが可能になります。
GBTプロトコールの目的
バイオフィルム外因性ステインと歯石を除去することで
・BOPを減らすまたは消滅させる
・歯周ポケットの深度を減らす
・根面を無毒化させ、必要に応じて次に続く処置に備える
1.感染予防と評価
まず患者様に洗口剤で洗口していただき施術中の浮遊細菌を減らす
歯、歯肉、歯周組織を評価する(軟組織の診査)
2.染め出し
歯周病、虫歯の原因となるバイオフィルムを染め出し液で可視化する
目的
①患者様にブラッシング指導
②100%バイオフィルム除去
③治療のエンドポイントの共有
3.情報提供
予防の重要性を強調する。
患者さま一人一人に合わせた清掃用具を推奨する
4.歯面と歯周ポケット下のエアフロー
バイオフィルム、ステイン、柔らかい歯石を除去する
14μmのエアフローパウダーを歯面、最深4mmまでの歯周病ポケット内のバイオフィルムを除去する
エアフローパウダーレモンを使用して、エナメル質上に残っているステインを除去する
5.歯肉縁下のペリオフロー
4〜9mmまでの歯周ポケット内のバイオフィルム除去する
天然歯の深いポケット内、根分岐部、インプラント周囲炎に使用する
6.超音波スケーリング
残った歯石を除去する
7.指差し確認
バイオフィルムの取り残しがないかどうかチェックする
歯石が完全に除去されたかチェックする
歯にフッ素を塗布して歯面を保護する
コンタクトカリエスや補綴物の不良を見ていく
8.新たなリコール予約
患者様の口腔内のリスク分析をし、リコール時期を計画する
その他の注意点として:クリーニング後2〜3時間は食事、飲み物、喫煙を控えるようにする。
また新たな着色予防のために、喫煙、コーヒー、紅茶、オレンジジュース、コーラ、赤ワインを控え
虫歯予防のためにフッ化物(歯磨き粉、フッ素洗口、フッ素塗布など)の使用をすすめる。

EMSプロフィラキシスマスターについて
・エアフロー、ペリオフロー、超音波スケーリングを統合した予防・歯周治療システム
・バイオフィルムコントロールを重視し、低侵襲で効率的な処置が可能
・メインテナンスから歯周基本治療まで幅広く対応できる
1.エアフロー(プラスパウダー、レモンパウダー)
プラスパウダー
・主成分はエリスリトール
→ 自然由来の糖アルコール。細菌の付着を抑えたり、甘みがあって味が良い。
その他にシリカ、塩化セチルピリジニウム(CPC)が含まれている
・粒子径は約14μmと非常に微細
・歯肉縁上から縁下浅部まで使用可能
・歯面、歯肉、修復物を傷つけにくい
・バイオフィルム除去に優れ、SPTやインプラント周囲清掃にも適応
・患者さまの不快感が少ない
レモンパウダー
・主成分は炭酸水素ナトリウム
・主に歯肉縁上のステイン除去を目的として使用
・コーヒー、茶、喫煙による着色に有効
・粒子径は約40μmでプラスパウダーより粒子が粗い
・縁下やインプラント部位への使用は不適
・清掃力は強いが、歯肉・象牙質への侵襲あり
・高血圧患者・ナトリウム制限患者には注意
2.ペリオフロー
・専用ノズルを用いて歯周ポケット内の縁下バイオフィルムを除去するシステム
・低侵襲で歯周基本治療やSPTに有効
適応症
・PPD5〜9mm
・残存骨が5mm以上あること
・クラックや歯根破折がない歯
禁忌・注意点
・強い発赤、腫脹
・歯周腫瘍が疑われる部位
・気腫リスクが高い症例
・インプラント周囲炎の治療
・PPD5mm未満
・指定外パウダーの使用
・同部位への挿入の繰り返し
・チップの使い回し
3.超音波チップ(PSチップ・PIチップ)
PSチップ
・歯肉縁上のスケーリング、歯肉縁下10㎜までの歯周デブライドメントに対応
・細径で低侵襲な歯周治療が可能
PIチップ
・歯肉縁上および縁下最大3mmまでの歯石除去
・インプラント周囲
・ベニア周囲
・クラウン周囲
・矯正装置周囲
・乳歯

歯科衛生士 田畑



