志野□非抜歯矯正のすすめ方
こんにちは。歯科医師の鈴木志野です。
今回は非抜歯矯正の具体的な進め方について説明させていただきます。
治療方法など
①顎が狭い→顎を広げます。
②歯が大きい→歯を小さく削ります。(ストリッピング(IPR)と言います。歯を削りたくない場合には削りません。)
③歯が前方や内側に倒れてきている→歯をまっすぐにしていきます。
④垂直なスペースを改善する
(③と④はGUMMETAL、MEAWワイヤーで治療します)
ストリッピング(IPRについて)
例えば歯が三角っぽい場合このまま歯を並べると
ブラックトライアングルという隙間が生まれてしまいます。(歯と歯の間の黒い部分です。)
そこで形を整えるために少し(0.2-0.5mm程度)削ります。歯の周りにエナメル質という無機質な構造があり、一般的にエナメル質が2-3mm程度といわれています。このうちの0.2-0.5mmを削って正常の歯の大きさにしていきます。
緑の部分を削ります。画像ではわかりやすいように大きく書いていますが、実際にはここまで削りません。
歯の形態を整えた後歯並びを整えると歯の形態が長方形で美しく、ブラックトライアングルのない歯並びになります。
GUMMETAL、MEAWワイヤーについて
ゴムメタルワイヤーとは豊田中央研究所で開発された新チタン合金素で作られた矯正用ワイヤーです。
従来の矯正治療によく使われるニッケルチタンワイヤーと同様に、形状記憶する合金でありながらニッケルチタンワイヤーにはない曲げることができるという特性をもったワイヤーです。
ゴムメタル素材の金属は矯正用ワイヤー以外にも医療用カテーテルや眼鏡フレーム、テニスラケットやゴルフクラブ、工業用製品などにも使われています。
またニッケルを含まないためニッケルアレルギーのある患者さんにも適している生体に優しい金属です。
これにより倒れている歯をまっすぐにしたり、歯を奥に動かしたり、顎を広げたりします。
また噛み合わせを深くしたり、浅くしたりもできます。
通常の矯正ではストレートワイヤーというニッケルチタンワイヤーを中心に使い、動かしていきます。
このワイヤーはレベリング(全体的にバランスよく並べる)にはとても良いワイヤーですが、垂直方向の動きは苦手です。
また奥への動きもできません。
この欠点を解消してくれるのがGUMMETAL、MEAWワイヤーです。
これを使いこなすことにより歯を三次元的にかなり自由に動かすことができます。
このGUMMETAL、MEAWワイヤーを使いオーストリア咬合学を元にした治療法により一般的な矯正法に比べて治療期間が約半分と短くなり、歯を抜かずに見た目のバランスと噛み合わせこバランスを整えられるようになります。
GUMMETAL、MEAWワイヤーを用いた矯正法では治療期間が早い方で6ヶ月、じっくりきちんと治したい方や難しい噛み合わせの方の場合には2年くらいと比較的短く矯正することができまるのも、この矯正法の特徴です。
顎の正しい位置は、歯の模型や写真、レントゲンの検査などで計測をする必要があります。
例え見た目の歯並びがきれいになっても、噛み合わせがしっかりしていなければ矯正をしても意味はありません。
歯を三次元的に動かして全体のバランスをとることが重要なのです。
ただ残念ながらこれを使いこなす歯科医は矯正をしている中でもごく少数しかいないため、一般的には歯を抜く矯正が主流になっています。
このワイヤーを正しく使うことにより、多くの方が歯を抜かずに矯正をするこができます。
GUMMETALでの矯正の特徴
①歯をまっすぐにすることで後ろに動かすことができ、ディスクレパンシーの解消(歯を並べるスペースを作ること)が可能になる
歯並びがガタガタしている原因として現代人は歯が並ぶスペースが足りず(この歯を並べる足りないスペースの合計をディスクレパンシーと呼びます)、その結果並びきらず、叢生(歯並びがガタガタする状態)になります。
このワイヤーを使うことで歯を押したり引っ張ったりではなく歯をひねる力を入れることができます。
これを奥歯全体にすることで歯列全体を起こすことができ、歯列全体を奥に動かすことができます。
多数歯を同時に起こすことでより奥にできることができるのもこのワイヤーの特徴です。
②歯をまっすぐ正しい方向に起こすことによって歯が直立し、かつ平行な歯軸を保つことができる
歯をまっすぐにすることで結果的に本来歯の根に負担がかかりにくいように噛むことができるため、歯にかかる負担が減り、長期的な安定をもたすことができます。
③噛み合わせの平面を修正することにより顎位が安定する
GUMMETAL を使うことで本来困難とされていた奥歯を下げる(歯の圧下とよびます)動きや、垂直的なコントロールも可能になります。
柔らかな金属特性によって三次元的な動きが正確に、自由に動かすことが可能になり、歯の負担のかからないコントロールができるためです。
これにより長期の安定が充分可能になります。
④治療期間の短縮
歯の一括移動や、第一小臼歯の抜歯を減らすことで、治療期間を半分以下にすることができます。
⑤第一小臼歯の抜去しなくてもいい場合が増える(非抜歯矯正が可能になるケースが増える)
非抜歯矯正とはいっても全く抜かない訳ではありません。例えば親知らずの抜歯を必要とするケースが多いです。
例えばGUMMETALを使うことで以下の動かし方をできます。
このような場合だと噛み合わせが深く、上の歯が前に倒れてしまい、出っ歯な印象になることが多いです。
この動きをすることで親知らずのあったスペースを活かして奥歯を後ろに動かし、かつ噛み合わせの平面がまっすぐになります。噛み合わせを上げることで前歯をより下げることができます。
また別のケースですが歯が内側に倒れているケースに対しては以下のようなねじれをなおすことでスペースを作ることができます。
総括
いかがでしたか。
少し専門的なお話になってしまいましたが、GUNMETAL を使用することで
歯を起こし、後ろに動かす
歯を後ろに回転する
内側に倒れた歯を起こす
など一つ一つは小さいですがトータルで換算すると大きなスペースを作れるケースは多いです。
これはあくまでも一例ですので、この方法で治せる方もいますし別の方法で治すべき方もいらっしゃいます。
また当院では矯正相談も随時受付しております。
矯正に興味がある方、他院で抜歯が必要と言われた方、また今の噛み合わせがどういう状態か知っておきたい方、まずはお気軽にご相談ください。